働きやすさにつながる『配慮』とは?

仕事を探すとき、仕事内容や給与、勤務時間などの条件を確認することは大切です。

しかし、同じ仕事内容や勤務時間であっても、働きやすさは職場の環境や仕事の進め方によって変わります。

例えば、口頭で一度に複数の指示を受けると混乱しやすい方もいれば、周囲の音が多い場所では集中しにくい方もいます。また、定期的な通院が必要な方や、疲れがたまりやすいため休憩の取り方を工夫する必要がある方もいます。

そのようなときに考えておきたいのが、働くうえで必要な「配慮」です。

今回は、配慮とはどのようなものなのか、自分に合った配慮事項をどのように整理すればよいのかをご紹介します。

働くうえでの「配慮」とは?

雇用の分野では、障害のある方が募集・採用や仕事をするうえで困っていることを改善するため、事業主には「合理的配慮」を提供することが求められています。

合理的配慮は、障害のある方が能力を発揮し、仕事を円滑に進めるために、職場の環境や仕事の進め方などを調整するものです。

具体的には、次のようなものがあります。

  • 業務の指示を口頭だけでなく、書面でも伝える
  • 仕事の内容や手順を分かりやすく示す
  • 定期的な面談や相談の機会を設ける
  • 通院に合わせて勤務日や勤務時間を調整する
  • 体調に応じて休憩を取りやすくする
  • 集中しやすい作業場所を検討する
  • 採用面接に支援機関の職員などが同席する

ただし、必要な配慮は全員に共通するものではありません。

同じ障害名や診断名であっても、困りやすい場面や必要な対応は人によって異なります。また、同じ人でも、仕事内容や職場環境によって必要な配慮が変わることがあります。

そのため、「この障害があるから、この配慮が必要」と一律に決めるのではなく、本人と企業が話し合いながら、具体的な内容を考えることが大切です。

配慮は希望がそのまま認められるとは限らない

配慮について考えるときに知っておきたいのは、本人が希望した内容が、必ずそのまま実施されるとは限らないことです。

企業は、本人が仕事をするうえで困っていることや希望を確認し、どのような対応ができるかを話し合います。そのうえで、仕事内容、職場の設備、企業の規模、費用や事業への影響なども考慮して、実施する配慮を決めます。

希望した方法の実施が難しい場合でも、別の方法で困りごとを減らせないかを話し合うことが重要です。

例えば、「常に一人で作業できる個室を用意してほしい」という希望が難しい場合でも、

  • 人の出入りが少ない席にする
  • 集中が必要な作業を行う時間を決める
  • 必要に応じて短時間利用できる場所を検討する

など、職場で実施できる別の方法が見つかる可能性があります。

配慮は、一方的に希望を伝えて終わるものではありません。本人と企業が、お互いの状況を確認しながら、仕事を続けやすい方法を一緒に考えていくものです。

まずは「困っている場面」を整理する

配慮事項を考えるとき、最初から「会社に何をお願いするか」を決めるのは難しいかもしれません。

まずは、これまでの仕事、訓練、学校生活、日常生活などを振り返り、自分がどのような場面で困りやすかったかを整理してみましょう。

例えば、次のような視点があります。

指示の受け方

  • 口頭だけの指示では内容を忘れやすい
  • 一度に複数の指示を受けると混乱する
  • 曖昧な表現では、どこまで作業すればよいか判断しにくい
  • 急な予定変更があると、次の行動に移るまで時間がかかる

仕事の進め方

  • 複数の作業が重なると、優先順位を決めにくい
  • 作業の終了基準が分からないと、必要以上に確認を続けてしまう
  • 分からないことがあっても、誰に聞けばよいか迷う
  • 自分から質問するタイミングをつかみにくい

職場の環境

  • 周囲の会話や電話の音が多いと集中しにくい
  • 人の出入りが多い場所では疲れやすい
  • 照明の明るさやにおいなどが気になり、作業を続けにくい
  • 人が多い休憩室では十分に休めない

体調や通院

  • 朝の通勤ラッシュによって疲れが強くなる
  • 長時間集中すると、急に疲れが出る
  • 定期的な通院のため、勤務日の調整が必要になる
  • 体調が悪くなったときに、自分から休憩を申し出にくい

大切なのは、「仕事が苦手」「人間関係が苦手」と大きくまとめるのではなく、実際に困った場面をできるだけ具体的に振り返ることです。

困る場面が具体的になると、必要な対策も考えやすくなります。

「自分でできる工夫」も確認する

困っている場面を整理したら、次に、自分で行っている工夫を確認します。

例えば、次のような工夫があります。

  • 指示を受けたときにメモを取る
  • 作業内容を自分の言葉で復唱する
  • やることを一覧にして、終わったものに印を付ける
  • タイマーを使って休憩時間を決める
  • 体調や睡眠時間を記録する
  • 分からないことを質問する前に、困っている部分をメモにまとめる

配慮事項を伝えるときに、自分で取り組んでいる工夫も一緒に説明すると、「どの部分を自分で対応でき、どの部分に周囲の協力が必要なのか」が分かりやすくなります。

ただし、すべてを自分一人で解決しなければならないわけではありません。

自分なりに工夫しても難しいことや、職場の協力がなければ対応できないことは、配慮として相談することができます。

「会社にお願いしたいこと」を具体的にする

次に、困りごとを減らすために、会社にどのような対応をお願いしたいかを考えます。

このときは、「配慮してほしい」「分かりやすくしてほしい」だけでなく、具体的な行動や方法に置き換えることがポイントです。

指示を覚えることが難しい場合

「指示を覚えるのが苦手です」

だけでは、企業側はどのような対応が必要なのか判断しにくいことがあります。

そこで、

口頭で複数の指示を受けると、内容の一部を忘れることがあります。自分でもメモを取りますが、作業内容を箇条書きにしたものを確認できると、正確に進めやすくなります。

と伝えると、困りごとと希望する対応が分かりやすくなります。

優先順位を決めることが難しい場合

複数の作業を同時に依頼されたときに、どの仕事から始めるか迷うことがあります。自分でも作業一覧を作成しますが、優先順位と期限を確認させていただけると助かります。

体調に波がある場合

疲れがたまると集中力が低下しやすいため、自分でも体調を記録しています。体調の変化があったときに、早めに相談できる担当者や方法を決めていただけると安心して働けます。

このように、

  1. どのような場面で困るのか
  2. 仕事にどのような影響があるのか
  3. 自分ではどのような工夫をしているのか
  4. 会社に何をお願いしたいのか

の順番で整理すると、配慮事項を具体的に伝えやすくなります。

配慮事項は「仕事との関係」で考える

配慮事項を整理するときは、その希望が仕事を進めるうえでどのように役立つのかを考えることも大切です。

例えば、「静かな場所で働きたい」という希望がある場合は、

周囲の会話が多い場所では、入力内容を間違えやすくなります。集中が必要な入力作業については、人の出入りが比較的少ない席で行えると、正確に作業を進めやすくなります。

というように、仕事への影響と一緒に説明します。

合理的配慮は、仕事を円滑に進めるために必要な調整です。そのため、「自分が過ごしやすいか」だけでなく、「その配慮によって仕事をどのように進めやすくなるか」という視点を持つと、企業側にも必要性が伝わりやすくなります。

一方で、配慮を行っても、その仕事に欠かせない業務を行うことが難しい場合があります。その場合は、希望する仕事や担当業務自体が自分に合っているかを改めて考える必要があります。

求人票を確認するときも、仕事内容と自分の配慮事項を一緒に見比べてみましょう。

配慮事項は、いつ伝えればよい?

配慮が必要になる時期によって、伝えるタイミングは異なります。

採用試験や面接を受ける際に配慮が必要な場合は、準備に時間がかかることもあるため、余裕を持って企業へ伝えることが大切です。

例えば、

  • 面接場所までの移動や入室に配慮が必要
  • 筆記試験で補助具を使用したい
  • 問題文の読み上げや文字の拡大が必要
  • 面接に支援者などの同席を希望する

といった場合です。

採用後の働き方に関する配慮については、面接時や入社前の面談などで相談する方法があります。また、面接時に障害や配慮事項を伝えていなかった場合でも、採用後に必要な配慮を相談することはできます。

ただし、企業が本人の困りごとや必要な対応を把握していなければ、具体的な配慮を検討することが難しくなります。

いつ、誰に、どこまで伝えるか迷う場合は、ハローワークや就労支援機関などに相談しながら整理する方法もあります。

一度決めた配慮がずっと同じとは限らない

必要な配慮は、一度決めたら終わりというものではありません。

実際に働き始めると、応募前には分からなかった困りごとが見つかることがあります。また、仕事内容、担当者、勤務時間、職場環境、本人の体調などが変わることで、必要な対応も変化する可能性があります。

そのため、配慮を受けながら働く場合は、

  • 現在の方法で仕事を進められているか
  • 困っていることが新しく生じていないか
  • 配慮の内容が仕事の状況に合っているか
  • 自分でできることが増えていないか

などを定期的に振り返ることが大切です。

必要があれば、本人と企業で改めて話し合い、配慮の内容を見直します。

自分の配慮事項を確認してみよう

次の項目を使って、自分の状態を振り返ってみましょう。

  • 仕事や訓練で困りやすい場面を説明できる
  • 困ったときに仕事へどのような影響が出るか分かっている
  • 自分でできる対策や工夫がある
  • 周囲の協力が必要な部分を整理できている
  • 会社にお願いしたいことを具体的に説明できる
  • その配慮が仕事にどう役立つかを説明できる
  • 配慮について相談する相手やタイミングを考えている

すべてに答えられなくても問題ありません。

実習や訓練を通して自分の様子を確認したり、支援者と一緒に過去の経験を振り返ったりすることで、少しずつ整理できます。

まとめ

働くうえでの配慮とは、障害や体調による仕事上の困りごとを減らし、能力を発揮しながら仕事を進めるための調整です。

必要な配慮は、障害名だけで決まるものではありません。本人の状態、仕事内容、職場環境などによって異なるため、本人と企業が話し合って考えることが大切です。

配慮事項を整理するときは、

「困りやすい場面」
「仕事への影響」
「自分で行っている工夫」
「会社にお願いしたいこと」

の順番で考えてみましょう。

配慮について考えることは、自分にできないことを並べることではありません。

自分がどのような環境や方法であれば力を発揮しやすいのかを知り、安定して働くための準備をすることです。

一人で整理することが難しい場合は、これまでの仕事や生活の様子を振り返りながら、支援機関などと一緒に考えてみましょう。

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